こんにちは。
歯科医師の大月です。
今回は皆さんに本と論文について少しお話させて頂きたいと思います。
まず、本について。
衛生士学校で頑張って勉強してきた皆さん、そして卒業してから学校で習ったことをもう一度チェックするために、以前使っていた教科書を引っ張り出してきて復習する方、本との付き合い方は皆それぞれ違うと思います。
私が卒業してから困ったときに頼りにしたのはやはり教科書でした。
あとは、いろいろな出版社からでている歯科関連の書籍です。
ここで考えてほしいのですが、本(ここでは歯科の専門書ってことにしときましょう)ってどうやって作られているのでしょうか。
まず教科書ですが、大学、専門学校によって採択する教科書は様々です。
場合によっては担当教授、教員が書いた本を皆さんが購入し、それを教科書として勉強する場合もあるでしょう。
教科書って正しいと皆思っているんですよね。
でも違うんです。
教科書っていっぱい間違えていることがあります。
著者も人間です。
出版社とのやり取りのなかで、校正が間違えていたり、そもそも間違えた認識を書いていたりすることもありえます。
また、その先生のある”持論”が検証されることもなく、”断定調”に書かれていることもあります。
私もキャリアのある先生や歯科衛生士と話しているときに、”でも先生、教科書にはそう書いてありましたよ”と言われることがあります。
その時に大切なのは、その内容は何かの証拠(エビデンスともいいますね)に基づいて書かれていたかどうかです。
通常、何かを示す場合はその出典や論文がチャプターや本の最後に明記されています。
読み物形式ではなく、教科書のような教育書ではそれが重視されます。
皆さんも本を読んでいるとき、後ろに“参考文献・書籍”を何気に見ていると思います。
あれが大切なんです。
本気で何かを調べて検証したい、それを人に伝えたいと思っている皆さん、場面を自分に置き換えてみましょう。
学校のレポートを皆の前で発表する際、学会や勉強会、医内ミーティングなど、皆に自分の話を聞いてもらう際、皆が知らない新しい事実や考え方を示したときに”なるほど、そうなんだ!”と思ってもらいたいわけです。
Aという本にそう書いてあったからというだけでは不足なときがあります。
“本当にそうなの?Bって本にはそんなこと書いてなかったけど、、、”なんて言われたときにどのように答えましょう?
最高の答え方はこうです。
“ご意見ありがとうございます。その点は今議論になっていますが、Aの本に引用されているCの論文を私は読みました。そしてそれを正しいと考えますので、そちらを採用して話をさせていただきました。”
なんて答えたらすごくエレガントですね!
つまり本に書いてある情報の元のソースをちゃんと調べ上げていたということです。
原著論文といいますが、オリジナルの情報ソース、それを一次情報といいます。
研究者は、誰もやっていないことを行い、有益な情報が得られたらそれを社会に伝えるために論文化します。
ここには歪められていない元の情報がありますが、必要な情報の一部のため、いろいろな情報を集め、著者なりにまとめ上げたものが本です。
これは二次情報といわれるもので、原著論文を書いた研究者の研究結果が引用されているものの、本の著者によって都合よく解釈されて”まちがえた情報”として載せられることがあることを知っておいてください。
身近なものでいうと、あるアンケート結果をまとめたDさんは一次情報の持ち主です。
それが本やテレビなどで紹介されるときその情報は二次情報となります。
本やテレビは多くの人が手に取り、その断片的な情報を人に伝えることがあります。
そうなるとどんどん本当の情報は歪んでいきます。
まさに伝言ゲームですね。
そうならないよう、皆さんも気をつけて本を正しく読んで頂きたいと思います。
次の第2回では論文についてお話させていただきます。
大月 基弘,歯学博士
ヨーロッパ歯周病学会 (European Federation of Periodontology) 認定歯周病/インプラント専門医
日本歯周病学会専門医,日本臨床歯周病学会認定医,歯周インプラント認定医