2023/11/30

インプラント患者さんが来院したら何を診る?

  

 皆さんこんにちは!診療所のQです。

 今回はインプラント患者さんが来院された際、担当歯科衛生士が診るポイントについて復習してみましょう。

以前のコラムではインプラントにおすすめのセルフケア商品をご紹介していますので、そちらもご確認ください! https://www.club-sunstar-pro.jp/content/dental-information/3119/

  

インプラントと天然歯の違いって?

  

 天然歯のポケット底部には結合組織性付着が存在し、ポケット内に侵入する細菌から歯槽骨を守る防波堤がありますが、インプラント周囲にはありません。

 また、天然歯では歯根膜が存在しますが、インプラント周囲に歯根膜は存在しません。つまりインプラント周囲組織は天然歯周囲組織と比べ、血液供給が少なく、細菌感染に対する防御機構も弱いことが考えられます。

 それゆえ、ひとたびインプラント周囲炎に罹患してしまうと、天然歯の歯周炎よりも進行が速いと言われています。その前段階のインプラント周囲粘膜炎の段階で早期発見・対応することが最も重要なのです。


 では、実際に私たちがインプラント患者さんを診る上で気を付けるポイントはどこでしょうか?おさらいしてみましょう。


   

1. プロービング検査

 天然歯同様、インプラント周囲組織の健康状態の把握にはプロービング検査は欠かせません。天然歯と比較して、インプラントの上部構造はカントゥア(豊隆)が大きいため、プロービング値に誤差が出やすいということを念頭におかなければいけません。また過去においてはプラスチックプローブの使用が推奨されていましたが、近年ではインプラントアバットメントに、チタンやジルコニアが用いられることが主流になりつつあります。ステンレスが傷をつけてしまう心配がなくなりましたので、使い慣れていないプラスチックプローブよりもステンレスプローブを使用するのが良いでしょう。プロービング圧はインプラント周囲組織が破壊されないように、天然歯におけるプロービング圧よりも弱めに挿入しましょう。


2. 上部構造の確認

 インプラント上部構造に異常がないか、ゆるみや不適合がないかなどを確認します。ゆるみや不適合が生じていると、隙間から細菌が侵入し、それらがインプラント周囲疾患の原因になる可能性があります。何か異常があれば、すぐに担当の歯科医師に報告しましょう。


3. エックス線検査

 インプラント周囲粘膜に炎症がある場合は、デンタルエックス線写真を撮影しましょう。万が一、インプラント周囲炎に罹っていた場合、急速に進行が見られるため、早期の対応が必要になります。早期発見するためにも、エックス線写真はかかせません。また、炎症がない場合でも、最低限1年に1度はインプラントが写るレントゲン写真を撮影しておくと良いでしょう。

 

 あらゆる検査を行った結果、インプラント周囲粘膜炎と診断された場合は、何が原因で炎症が起きているのかを考えましょう。その原因が単純にプラークコントロールの場合は、どうすれば改善できるかを患者さんと一緒に考えていくことが大切です。上部構造の形態によって、プラークコントロールを難しくしている場合は、担当医に相談し、より清掃しやすい形態に再製することも必要です。

また何より、患者さん本人に、インプラント周囲疾患についてよく理解しておいていただくことが大切です。なかには「インプラントは人工物だから、みがかなくても病気になりませんよね?」とおっしゃる方もいます。インプラント手術前から、インプラントとはどういうものなのかをよく説明し、セルフケアの重要性を理解しておいていただくことが重要です。

 インプラント治療は無事に埋入することがゴールではありません。患者さんが満足に噛める状態を続けていくために、私たち歯科衛生士はインプラント周囲粘膜炎を見極める力を身に付けていきましょう!

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