口腔内には、主として頬粘膜、舌背、歯面および歯肉溝(歯肉縁下)という部位によって異なる4つの細菌叢が存在しています。それらの細菌叢には、500種とも700種とも言われる多様な細菌が存在していますが、それぞれが単独の状態でいるのではなく、同じ菌種同士あるいは異なる菌種とともにコミュニティを形成。口腔内の細菌叢は腸内の細菌叢と同様に、外来微生物の侵入・定着を防ぎ、口腔の健常状態を保つ役割を果たしているのです。
しかし、そのバランスが崩れると疾患に関連する細菌の割合が増え、歯周病や齲蝕の発症へと至ってしまう。ただ、それらの細菌を完璧に除去するのは困難な場合が多いのも事実です。細菌叢のバランスを整え、歯肉炎や歯周炎を予防するためには、現時点で第一の手段となるのが丁寧な日常のプラークコントロールです。そうした日常的にできる習慣を通じて、口腔内環境をコントロールすることがこれからの歯周病予防や齲蝕対策には重要。一人ひとりのオーラルヘルスを実現する第一歩は、口腔内環境のコントロールからはじまると言えます。
※参考文献 日本薬学会 ファルマシア/2010年 46巻10号 929-933頁【「口腔内細菌叢のコントロール( セミナー <ミニ特集> 口腔衛生と薬学 )」】