人の口腔内には、およそ500〜700種類の細菌が存在すると言われています。口腔内の病原菌は歯周病をはじめ、齲蝕や口臭などの原因となり、なかでも歯周病に関しては、全身疾患との関係性を示唆する報告が年々増加。アルツハイマー、リウマチ、大腸癌、糖尿病、心疾患、骨粗鬆症など、歯周病菌はさまざまな全身疾患への関与が指摘されているのです。近年、歯周病の罹患割合や重症割合が増加傾向にあり、単なる口腔ケアを超えたオーラルヘルスには一層注力していく必要があります。
そこで着目したいのが、歯周病菌の増殖を抑えるラクトフェリンとラクトパーオキシダーゼ。乳や唾液などの外分泌液に含まれる生体防御成分であり、口腔内における口腔衛生の維持に働くと考えられている成分です。ラクトフェリンは鉄結合性の糖タンパク質で、歯周病菌を含む多くの病原菌への抗菌作用、抗炎症作用、抗バイオフィルム作用などの機能があるとされています。そして、ラクトパーオキシダーゼはヘム結合性の糖タンパク質であり、唾液成分であるチオシアン酸イオンと過酸化水素の反応を触媒し抗菌物質となる次亜チオシアン酸を生成。唾液成分と反応することで、歯周病菌を含む病原菌に対して強い抗菌活性を持つのです。
また、歯周病菌への抑制作用だけではなく、口腔衛生の悪化に関与しない常在菌の割合は増加するという臨床試験結果も。ラクトフェリンとラクトパーオキシダーゼの口腔衛生分野への応用は、これからのオーラルヘルスの発展に一層寄与することが期待できます。
※参考文献 ミルクサイエンス/2016年 65巻3号 227-234頁【「乳タンパク質ラクトフェリンとラクトパーオキシダーゼの口腔衛生分野への応用」】