「患者さんに痛みを与えてしまう」「歯石を取るのが難しい」…。そんな歯科衛生士の悩みや困りごとを解決できる学び場があるのをご存じですか?今回は、歯科衛生士のためのレッスンやセミナー、自習の場などを提供している「ラプトレOSAKA」(大阪市)を訪問。詳しい取り組みや歯科衛生士の仕事への想いなどを、代表・岡村乃里恵さんと育成トレーナー・中谷はるかさんに教えていただきました。
ラプトレOSAKA育成トレーナー・中谷はるかさん(左)と代表・岡村乃里恵さん(右)
ラプトレOSAKAは、歯科衛生士の皆さんがお悩み解決のために通うことができる「歯科衛生士の学び場」として、各種レッスンやセミナー、マネキンやデンタルチェアを使った自習トレを提供しています。歯科衛生士として経験を積んだメンバーがトレーナーとして在籍しており、トレーナーに悩みごとを相談できるのはもちろん、充実した歯科専門書を読んだりすることもできる、全国でも珍しい教育機関です。
私たちの活動は、代表の岡村自身が復職したときの経験が原点。岡村自身が復職するとき、「歯科衛生士業務が久しぶりすぎてとても不安で、悩みや質問に答えてくれる人がいればいいのに」と思ったからです。カラダを鍛えたければスポーツジムはあるのに、歯科衛生士の世界にはありません。プロービングやSRPなど、ちょっとしたことでも気軽に聞けて丁寧に教えてもらえたらいいなという、一人の歯科衛生士の切実な願いから生まれたのが、ラプトレOSAKAです。
公園の緑を望む大きな窓やナチュラルでぬくもりのあるインテリアが心地よいと好評の空間。
ラプトレOSAKAではデンタルチェアやマネキンを使ったレッスンや自習トレが可能。
ラプトレOSAKAに初めて来られる皆さんは、緊張で不安げな表情の方も多く見られます。最初に、他の歯科衛生士も同じように悩んでいることを伝えて、何に困っているのかを丁寧にヒアリングするように心がけています。一人で乗り越えるのは難しくても、悩みに合ったレッスンを受けて一緒にトレーニングをすれば、徐々に不安が消えていきます。学ぶうちに明るい表情や前向きな気持ちになっていく様子を見るのが一番嬉しいです。別の技術を上達させたいと少しずつ意欲が出てくる方もいます。
ラプトレOSAKAをオープンした当初は新人さんと復職・転職者さんが多く来られると予想していましたが、実際にはベテラン世代の方や、連休を利用して北海道や鹿児島から通う方もいらっしゃいます。困っていることがあったら、一人で悩まず、私たちに相談することで、自信と笑顔につながればと願っています。
さまざまな歯科専門書がずらりと並ぶ一角。
「手に入りにくい書籍も多いので、本を読むために訪れる方もいます」
「長い期間にわたって患者さんと定期的に会って一緒に年齢を重ねていくのが歯科衛生士の仕事」と語る岡村さん。
口の中は、その人の生活や体調が現れます。患者さんの口腔管理を行いながら患者さんの人生を伴走するのが、歯科衛生士という職業の本質だと考えています。
食事内容は変わっていないか、仕事の調子はどうか、よく眠れているかなどを、家族でも友達でもないのにずっと気にかける仕事は、他にはなかなかありません。そんなおせっかいで奥深い歯科衛生士の仕事を誇りに思っているので、働くおもしろさや達成感をサポートしたい。
それだけではなく、子育て中のママ歯科衛生士さんに、歯科衛生士という資格を活かした新しい働き方をつくっていきたい(ラプトレトレーナーとして働きたい方を絶賛募集しています!)。何よりも「生涯歯科衛生士」として働くことを応援したい。そんな想いでラプトレOSAKAを運営しています。
テキストや動画は全てオリジナル。
「分身を送り出す気分」で丁寧に製作している。
手の大きさが違えば説明図の手の位置も違うのでは?
など、驚くほどきめ細やかな視点で検証を重ねて
テキストを完成させている。
週の1日を動画製作に充て、「スタッフ全員がアイデアとフィードバックを惜しまず、
試行錯誤を重ねながら質が高くてわかりやすい動画を目指しています」
現在、スタッフ全員で取り組んでいるのが、動画作りです。2016 年から運営している歯科衛生士のスキルを学べる動画配信サイトを、2023年秋頃にリニューアルする予定。企画、台本、撮影、編集を外部に委託せず、全てを私たちの手で行っているからこそ、歯科衛生士の「わからない」に絶妙に応えられると自負しています。出来上がった動画を見ると喜びがこみあげてきます。今よりさらに実践的な内容をめざしているので、スキルアップのためはもちろん、後輩指導をしたい方や臨床で働く方など、いろいろな立場の歯科衛生士さんに見ていただけると嬉しいです。
工程の一部は、大阪以外に在住するスタッフがリモートで担当。歯科衛生士の雇用や新しい働き方を増やしたいという私たちの目標の実現にもつながっています。
将来の夢は、ラプトレOSAKAのさらに先の教育施設をつくること。歯科医師の方々などに協力いただいて、私たち歯科衛生士だけではできない新しいシステムを生み出したいと構想しています。
私たちにはやりたいことがあふれていて、周りの方からは、いつもわくわくしながら働いているように見えるそうです。「嬉しそうに仕事してるね」といろんな方に言われるのは、歯科衛生士の仕事が大好きだからだと思います。これからも一人でも多くの歯科衛生士が充実して働ける環境と機会を増やし、意欲ややりがいを応援するために力を尽くします。
生活スタイルに合わせて
さまざまなスパンで出勤する9名に加え、
リモートワークで参加するスタッフも。
「ラプトレOSAKAで働いているのは、ラプトレメンバーが
楽しそうに働いている姿を見て『ここで働きたい!』と
希望したスタッフばかりなんです」と中谷さん。